ホンノンボ

2008年05月11日
ホンノンボ―ふしぎ盆栽ホンノンボ―ふしぎ盆栽
(2007/03)
宮田 珠己

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【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)



【紹介フレーズ】

その1
 ――岩があるな。
 と、はじめは思っただけだった。
 とくに岩には興味はないので、それだけなら気にもとめなかっただろう。それでも、ふと、その岩が気になったのは、そこにミニチュアがのっていたからである。
 陶器でできた家や、五重塔のようなものが、岩のあちこちにのっていた。そのせいで岩が、山か島のように見える。箱庭のつもりだろうか。
 ――きっとホテルの従業員が、ふざけてこんなものをのせたにちがいない。
 わたしは岩のまわりをぐるぐると歩いた。
 それは、まったく子供じみていて、大人がこれをつくっているところを想像してみると、その光景はとてもマヌケに思えた。マヌケで、そして、とてもナイスだ。

その2
 そこには、その盆栽なりの世界がはっきりと存在しているのが感じられた。それはただヘンなのではなく、伝統にのっとった一定の秩序、あるいはルールというか、体系があるようなのである。
 わたしは、心の中で思わずこうつぶやいていた。
 仮にも一国の伝統文化が、こんなおもちゃのようなマヌケな感じでいいのか!
 後から思うに、このふしぎな盆栽が、わたしにとって、どうにも気になってしかたのないものに変貌したのは、どうやら、そのときであった。

その3
 面白いのは、このように風景の中にミニチュアを置いて縮尺を変化させるだけでなく、岩を削ったり、コンクリートで道をつけたりして、その場所らしさを高めようとあれこれと細工を施したホンノンボが数多く見られることで、そこには日本の庭石などのように、できるかぎり自然の風情を活かしつつ、というような配慮はまるでない。人工物であることにまったく衒いがないのだ。日本のように具体的なイメージを表に出さず奥に秘めてしまって、その先は独自で想像してください、というようなまわりくどいことはまったくしないで、そっちのほうが粋だとも、こっちは野暮だとも思わず、思ったらそのままつくるというスタンスが貫かれているのである。



今回は宮田珠己さんの本です。その名は「ふしぎ盆栽 ホンノンボ」。いつもジェットコースターやウミウシなどといった変り種を題材にする宮田さん、今回の作品も過去に負けず劣らず変り種です。

ホンノンボとは一言でいうと「ベトナム風盆栽」のこと。しかしこの「ベトナム風」が少しくせもので、岩を主体とした盆栽にミニチュアやコンクリートを使いながら世界を創造するのだそうです。

宮田さんのはまりっぷりは相当なもので、「このバカさ加減がたまらない」という彼の想いにはなぜかものすごい説得力があります。とはいえ最後はやっぱり「取材の題材よりも宮田さんが面白い」という一冊でした。

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