椿山課長の七日間

2008年04月27日
椿山課長の七日間 (朝日文庫)椿山課長の七日間 (朝日文庫)
(2005/09/15)
浅田 次郎

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【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)



【紹介フレーズ】

(なし)



ソフトウェア試験もひとまず終わり、ようやくいつもの読書生活に戻ることができた今日この頃。そんな栄えある一冊目はコレ「椿山課長の七日間」です。この本は西田敏行さん主演の映画にもなった小説でした。

物語にはサラリーマンの椿山和明、小学生の根岸雄太、暴力団組長の武田勇が登場します。三人はそれぞれ自分の人生に終止符をうった人たち。本来なら極楽へと向かうはずが、家族を残してきた彼らはもう一度だけ姿かたちを変えて現世へと戻ります。そんな彼らに与えられた時間はたったの7日間。それほどの短い時間のなかで、自分たちの「家族」と向き合い、ばらばらだった三つの輪は物語が進むにつれて一つになるのです。

テーマはずばり「死」と「家族愛」。暗くなりそうなテーマですが、この本ではそれが「面白おかしく」しかも「ハッピー」に描かれています。ラスト手前で物語が加速していくところでは、通勤途中の満員電車にもかかわらず思わず涙しそうになったほど。そこには「やさしく」「暖かく」「切なく」、そしてやはり「面白おかしく」「ハッピー」な物語が描かれていました。「死」をテーマにしてこれほどまでに面白おかしい小説を僕は他に知りません。

それにしてもこの本を読み終えると、家族が欲しくなり、子供が欲しくなります。「家族愛」で満たされ、誰もが迎える「死」を前に「ハッピー」に過ごす。当たり前の生活ですが、それが人生における幸せなのですから。

チーム・バチスタの栄光

2008年04月08日
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599)チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599)
(2007/11/10)
海堂 尊

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チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600))チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600))
(2007/11/10)
海堂 尊

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【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)



【紹介フレーズ】

(なし)



面白かった。面白すぎていっきに読んでしまいました。。。ということで今回は「チーム・バチスタの栄光」です。

この本は本当のお医者さんが書いた小説で、しかも現役のお医者さんが仕事の傍らで書いたというから驚きです。そしてさらにこの完成度で一作目というのですから二重の驚きです!文章にはむだがなく、それがテンポよく組み立てられてあり、読み始めると手を止めることができません。また筆者がお医者さんということもあり、細部の描写がとてもリアルに表現されています。手術中の臨場感や緊張感、これらが主人公を通して読み手に否応なしに伝わってきます。

本書の登場人物がみな個性派ぞろいなところも、読み手が簡単に引き込まれてしまう点でしょう。出世欲こそないが頭のいい主人公、アクティブ・フェーズやパッシブ・フェーズといったコミュニケーション技術を駆使してなぞを暴くロジカル・モンスター、天才肌で人を魅了するチーム・バチスタのリーダー、などなど。登場する人物すべてに特徴があり、顔があるといった感じでした。

うーん、小説はやっぱり面白い。そう感じた一冊でした。

アンダーグラウンド

2008年04月06日
アンダーグラウンドアンダーグラウンド
(1997/03)
村上 春樹

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【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)



【紹介フレーズ】

 おそらくそれは一般マスコミの文脈が、被害者たちを「傷つけられたイノセントな一般市民」というイメージできっちりと固定してしまいたかったからだろう。もっとつっこんで言うなら、被害者たちにリアルな顔がない方が、文脈の展開は楽になるわけだ。そして「(顔のない)健全な市民」対「顔のある悪党たち」という古典的な対比によって、絵はずいぶん作りやすくなる。

 私はできることなら、その固定された図式を外したいと思った。その朝、地下鉄に乗っていた一人ひとりの乗客にはちゃんと顔があり、生活があり、人生があり、家族があり、喜びがあり、トラブルがあり、ドラマがあり、矛盾やジレンマがあり、それらを総合したかたちでの物語があったはずなのだから。ないわけがないのだ。それはつまりあなたであり、また私でもあるのだから。

 だから私はまず何よりも、彼/彼女の人となりを知りたかったのだ。それが具体的に文章になるにせよ、ならないにせよ。



1995年3月20日。東京で地下鉄サリン事件が起きました。それは朝の通勤時間帯をねらい、込み合った地下鉄の車内でサリンがまかれた事件です。乗客や駅員ら12名が死亡、5510人が重軽傷を負いました。事件後まもなくして、著者の村上春樹さんは被害者の方々に対するインタビューを敢行します。そして彼ら一人ひとりが持つストーリーをこの一冊にまとめました。

痛々しい記憶でいっぱいのストーリーなか、そこにある共通点が浮かびます。それは被害者の誰もが事件直後に「自分は事件とは無関係」と感じていたことです。たとえ周りで人が倒れ、自分の体調に異変がきたしても、それはただ「自分の体調が良くない」だけであり、外部とリンクすることがなかったといいます。不思議なことにあのときの自分にはそれ以外に考える余地がなかったと。。。

そういえば僕にも似たような経験がありました。それは地下鉄サリン事件と同じ年に起きた阪神大震災でのことです。地震があったこの日、わが家はそれなりの被害を受けました。家が壊れることこそありませんでしたが、部屋のタンスが倒れ、食器が全壊したり、と見るも無残な光景です。「なぜわが家だけがこんな目に」被害を受けた僕がまっ先に感じたのはこれでした。大きな地震です。改めて考えると被害はわが家だけでなかったことが想像できます。しかし当時の僕にはそれができませんでした。そう、そのときの僕はしばらくのあいだ外部とまったくリンクしなかったのです。

「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、この本にはそれがぴったり当てはまります。被害者の方々が持つ非日常的なストーリーが心に重くのしかかり、僕にとって忘れられない一冊になりそうです。

被害者の方々の多くは、今もなお頭痛などの後遺症に悩まされ続けているそうです。この事件は僕たちにとって過去のものですが、彼らにとっては今もなお続く事件なのです。
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