プリズンホテル
2008年07月06日
![]() | プリズンホテル〈1〉夏 (集英社文庫) (2001/06) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
![]() | プリズンホテル〈2〉秋 (集英社文庫) (2001/07) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
![]() | プリズンホテル〈3〉冬 (集英社文庫) (2001/09) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
![]() | プリズンホテル〈4〉春 (集英社文庫) (2001/11) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)
【紹介フレーズ】
奥湯元あじさいホテル館内のご案内
御注意
一、情報収集には万全の配慮を致しておりますが、不慮のガサイレ、突然のカチコミの際には、
冷静に当館係員の指示に従って下さい。
一、客室のドアは鉄板、窓には防弾ガラスを使用しておりますので、安心してお休み下さい。
一、貴重品はフロントにて、全責任をもってお預かり致します。
一、波紋・絶縁者、代紋ちがい、その他不審な人物を見かけた場合は、
早まらずにフロントまでご連絡下さい。
一、館内ロビー・廊下での仁義の交換はご遠慮下さい。
支配人
お客人 各位
今回の本はコレ、プリズンホテル。著者はあの「鉄道員(ぽっぽや)」で有名な浅田次郎さんです。当Klog Libraryでも「椿山課長の七日間」で一度紹介させてもらっています。
さて、このプリズンホテルですが、テーマはずばりヤクザもの。しかもここではヤクザな従業員がこのプリズンホテル(正式名称は奥湯元あじさいホテル)を切り盛りするのです。ホテルを愛し、お客さまに一生懸命になって尽くすそんな彼らの行動は、時におっかなく、時におかしく、そして時に愛おしくなるほど。
全4巻に目をとおすと、実に様々な人の人生がこのプリズンホテルと交差します。すこし大げさな表現にも思えますが、彼らのホテルを後にする光景を見ると、このホテルには何かしら人生における分岐点が存在していたのだと伝わってくるのです。
読んでいると笑いや涙がたえません。ヤクザの文化に触れ、不器用な彼らのことがたちまち好きになることうけあいです。
ホンノンボ
2008年05月11日
![]() | ホンノンボ―ふしぎ盆栽 (2007/03) 宮田 珠己 商品詳細を見る |
【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)
【紹介フレーズ】
その1
――岩があるな。
と、はじめは思っただけだった。
とくに岩には興味はないので、それだけなら気にもとめなかっただろう。それでも、ふと、その岩が気になったのは、そこにミニチュアがのっていたからである。
陶器でできた家や、五重塔のようなものが、岩のあちこちにのっていた。そのせいで岩が、山か島のように見える。箱庭のつもりだろうか。
――きっとホテルの従業員が、ふざけてこんなものをのせたにちがいない。
わたしは岩のまわりをぐるぐると歩いた。
それは、まったく子供じみていて、大人がこれをつくっているところを想像してみると、その光景はとてもマヌケに思えた。マヌケで、そして、とてもナイスだ。
その2
そこには、その盆栽なりの世界がはっきりと存在しているのが感じられた。それはただヘンなのではなく、伝統にのっとった一定の秩序、あるいはルールというか、体系があるようなのである。
わたしは、心の中で思わずこうつぶやいていた。
仮にも一国の伝統文化が、こんなおもちゃのようなマヌケな感じでいいのか!
後から思うに、このふしぎな盆栽が、わたしにとって、どうにも気になってしかたのないものに変貌したのは、どうやら、そのときであった。
その3
面白いのは、このように風景の中にミニチュアを置いて縮尺を変化させるだけでなく、岩を削ったり、コンクリートで道をつけたりして、その場所らしさを高めようとあれこれと細工を施したホンノンボが数多く見られることで、そこには日本の庭石などのように、できるかぎり自然の風情を活かしつつ、というような配慮はまるでない。人工物であることにまったく衒いがないのだ。日本のように具体的なイメージを表に出さず奥に秘めてしまって、その先は独自で想像してください、というようなまわりくどいことはまったくしないで、そっちのほうが粋だとも、こっちは野暮だとも思わず、思ったらそのままつくるというスタンスが貫かれているのである。
今回は宮田珠己さんの本です。その名は「ふしぎ盆栽 ホンノンボ」。いつもジェットコースターやウミウシなどといった変り種を題材にする宮田さん、今回の作品も過去に負けず劣らず変り種です。
ホンノンボとは一言でいうと「ベトナム風盆栽」のこと。しかしこの「ベトナム風」が少しくせもので、岩を主体とした盆栽にミニチュアやコンクリートを使いながら世界を創造するのだそうです。
宮田さんのはまりっぷりは相当なもので、「このバカさ加減がたまらない」という彼の想いにはなぜかものすごい説得力があります。とはいえ最後はやっぱり「取材の題材よりも宮田さんが面白い」という一冊でした。
椿山課長の七日間
2008年04月27日
![]() | 椿山課長の七日間 (朝日文庫) (2005/09/15) 浅田 次郎 商品詳細を見る |
【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)
【紹介フレーズ】
(なし)
ソフトウェア試験もひとまず終わり、ようやくいつもの読書生活に戻ることができた今日この頃。そんな栄えある一冊目はコレ「椿山課長の七日間」です。この本は西田敏行さん主演の映画にもなった小説でした。
物語にはサラリーマンの椿山和明、小学生の根岸雄太、暴力団組長の武田勇が登場します。三人はそれぞれ自分の人生に終止符をうった人たち。本来なら極楽へと向かうはずが、家族を残してきた彼らはもう一度だけ姿かたちを変えて現世へと戻ります。そんな彼らに与えられた時間はたったの7日間。それほどの短い時間のなかで、自分たちの「家族」と向き合い、ばらばらだった三つの輪は物語が進むにつれて一つになるのです。
テーマはずばり「死」と「家族愛」。暗くなりそうなテーマですが、この本ではそれが「面白おかしく」しかも「ハッピー」に描かれています。ラスト手前で物語が加速していくところでは、通勤途中の満員電車にもかかわらず思わず涙しそうになったほど。そこには「やさしく」「暖かく」「切なく」、そしてやはり「面白おかしく」「ハッピー」な物語が描かれていました。「死」をテーマにしてこれほどまでに面白おかしい小説を僕は他に知りません。
それにしてもこの本を読み終えると、家族が欲しくなり、子供が欲しくなります。「家族愛」で満たされ、誰もが迎える「死」を前に「ハッピー」に過ごす。当たり前の生活ですが、それが人生における幸せなのですから。
チーム・バチスタの栄光
2008年04月08日
![]() | チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599) (2007/11/10) 海堂 尊 商品詳細を見る |
![]() | チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600)) (2007/11/10) 海堂 尊 商品詳細を見る |
【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)
【紹介フレーズ】
(なし)
面白かった。面白すぎていっきに読んでしまいました。。。ということで今回は「チーム・バチスタの栄光」です。
この本は本当のお医者さんが書いた小説で、しかも現役のお医者さんが仕事の傍らで書いたというから驚きです。そしてさらにこの完成度で一作目というのですから二重の驚きです!文章にはむだがなく、それがテンポよく組み立てられてあり、読み始めると手を止めることができません。また筆者がお医者さんということもあり、細部の描写がとてもリアルに表現されています。手術中の臨場感や緊張感、これらが主人公を通して読み手に否応なしに伝わってきます。
本書の登場人物がみな個性派ぞろいなところも、読み手が簡単に引き込まれてしまう点でしょう。出世欲こそないが頭のいい主人公、アクティブ・フェーズやパッシブ・フェーズといったコミュニケーション技術を駆使してなぞを暴くロジカル・モンスター、天才肌で人を魅了するチーム・バチスタのリーダー、などなど。登場する人物すべてに特徴があり、顔があるといった感じでした。
うーん、小説はやっぱり面白い。そう感じた一冊でした。
アンダーグラウンド
2008年04月06日
![]() | アンダーグラウンド (1997/03) 村上 春樹 商品詳細を見る |
【評価】
★★★★☆(4点:人に貸す)
【紹介フレーズ】
おそらくそれは一般マスコミの文脈が、被害者たちを「傷つけられたイノセントな一般市民」というイメージできっちりと固定してしまいたかったからだろう。もっとつっこんで言うなら、被害者たちにリアルな顔がない方が、文脈の展開は楽になるわけだ。そして「(顔のない)健全な市民」対「顔のある悪党たち」という古典的な対比によって、絵はずいぶん作りやすくなる。
私はできることなら、その固定された図式を外したいと思った。その朝、地下鉄に乗っていた一人ひとりの乗客にはちゃんと顔があり、生活があり、人生があり、家族があり、喜びがあり、トラブルがあり、ドラマがあり、矛盾やジレンマがあり、それらを総合したかたちでの物語があったはずなのだから。ないわけがないのだ。それはつまりあなたであり、また私でもあるのだから。
だから私はまず何よりも、彼/彼女の人となりを知りたかったのだ。それが具体的に文章になるにせよ、ならないにせよ。
1995年3月20日。東京で地下鉄サリン事件が起きました。それは朝の通勤時間帯をねらい、込み合った地下鉄の車内でサリンがまかれた事件です。乗客や駅員ら12名が死亡、5510人が重軽傷を負いました。事件後まもなくして、著者の村上春樹さんは被害者の方々に対するインタビューを敢行します。そして彼ら一人ひとりが持つストーリーをこの一冊にまとめました。
痛々しい記憶でいっぱいのストーリーなか、そこにある共通点が浮かびます。それは被害者の誰もが事件直後に「自分は事件とは無関係」と感じていたことです。たとえ周りで人が倒れ、自分の体調に異変がきたしても、それはただ「自分の体調が良くない」だけであり、外部とリンクすることがなかったといいます。不思議なことにあのときの自分にはそれ以外に考える余地がなかったと。。。
そういえば僕にも似たような経験がありました。それは地下鉄サリン事件と同じ年に起きた阪神大震災でのことです。地震があったこの日、わが家はそれなりの被害を受けました。家が壊れることこそありませんでしたが、部屋のタンスが倒れ、食器が全壊したり、と見るも無残な光景です。「なぜわが家だけがこんな目に」被害を受けた僕がまっ先に感じたのはこれでした。大きな地震です。改めて考えると被害はわが家だけでなかったことが想像できます。しかし当時の僕にはそれができませんでした。そう、そのときの僕はしばらくのあいだ外部とまったくリンクしなかったのです。
「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、この本にはそれがぴったり当てはまります。被害者の方々が持つ非日常的なストーリーが心に重くのしかかり、僕にとって忘れられない一冊になりそうです。
被害者の方々の多くは、今もなお頭痛などの後遺症に悩まされ続けているそうです。この事件は僕たちにとって過去のものですが、彼らにとっては今もなお続く事件なのです。







![チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 599)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/219RuJiYqKL.jpg)
![チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ [宝島社文庫] (宝島社文庫 (600))](http://ecx.images-amazon.com/images/I/2109ut3zUjL.jpg)
